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Vol.11 No.1

9 SCR Ⅰ
細谷 満
Mitsuru HOSOYA
本誌編集委員、日野自動車
JSAE ER Editorial Committee / HINO MOTORS Ltd.

 Sugiyamaら(9-1)はディーゼルエンジンの排出ガス中のNOxを低減する尿素SCRシステムにおいて、尿素水噴射システムにおけるデポジット抑制のため、排出ガス中で噴射した尿素水液滴の挙動を検討した。室温条件でトレーサ粒子としてタルクとコーンスターチパウダー等の微粒子を使用し、PIV(Particle Image Velocimetry)により流速分布を計測した。 排出ガスと噴射された尿素水液滴のクロスフローの画像と流速分布の計測結果を図9-1 に示す。尿素水噴射開始から0.03秒間においてふたつの液滴挙動を示した。排気管内の尿素水液滴の分布および流速といった挙動が表現されており、今後、尿素の結晶化を抑制するための提案を期待したい。

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 ディーゼルエンジンのNOx低減を目的とした尿素SCRシステムでは、噴射した尿素水が排気管壁に衝突することによる結晶化を防止する必要がある。菊池ら(9-2)は、ライディングフロスト現象下で3種類の表面テクスチャ(立体形状)による液滴の微粒化挙動を高速度カメラにより可視化した。図9-2に結果を示す。テクスチャの違い(Dimple 1~3)により液滴の微粒化の挙動が異なることが確認された。Dimple 2, 3のケースでは液滴が溝を覆うことで発生した蒸気を溜め込み、溝内部で圧力上昇し、噴き上がることにより微粒化が促進したものと推定した。尿素SCRシステムにおける尿素デポジットの抑制は重要であり、得られた知見が活用されることを今後期待したい。

【参考文献】
(9-1) Naoki Sugiyama, Yuiki kuramoto,Asuka Kikuchi, Yuki Kawamoto, Akira Obara, Tetsuo Nohara, Shun Takahashi, Masayuki Ochiai, Kazuno Osumi, Naoya Ishikawa:Performance Prediction of Urea SCR System by Using PIV and Discrete Droplet Model、自動車技術会2020年秋季大会学術講演会講演予稿集、No.20206149
(9-2) 菊池 飛鳥、小原 昭、杉山 直樹、川本 裕樹、蔵本 結樹、奈良 祥太郎、野原 徹雄、高橋 俊、落合 成行:表面テクスチャによる衝突液滴の微粒化制御、自動車技術会2020年秋季大会学術講演会講演予稿集、No.20206151