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Vol.11 No.6

今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十四次答申)
Future Policy for Motor Vehicle Emission Reduction (Fourteenth Report)
森山 真人(環境省水・大気環境局総務課環境管理技術室) 

Mahito MORIYAMA (Deputy Director, Environmental Control Technology Office, Environmental Management Bureau Ministry of the Environment)

はじめに

 平成8年5月21日に環境庁長官から中央環境審議会に諮問された「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」を受けて、中央環境審議会はこれまでに第十三次答申(平成29年5月31日)まで答申を行ってきた。
 今般、自動車排出ガス専門委員会で示された優先的検討課題に関して、令和2年8月20日に中央環境審議会から環境大臣へ第十四次答申(1)がなされた。本稿ではその概要について紹介する。

微小粒子状物質等に関する対策

 従来のPM規制における測定法は、フィルタに捕集した粒子の質量を測定する手法であり、PM排出量の低減に伴う測定感度の課題から、規制値の大幅な引き下げは困難となってきている。一方で、粒子数をカウントするPN計測法を用いれば、より高感度な計測が可能となる。

 環境省の調査結果では、PM質量とPNには一定程度の相関関係がある。このため、PN規制を導入すれば、実質的にPM排出量を引き下げることが可能であることから、ディーゼル車および筒内直接噴射ガソリンエンジン搭載車に対してPN規制を導入することが適当であることが示された。
 許容限度目標値は技術的に実現可能な限り厳しい値とし、また可能な限り早い時期に適用することが妥当であるとされ、国内外の技術開発動向や自動車メーカーにおける技術開発期間等を考慮して、表1のとおりとすることが適当であることが示された。

特殊自動車の排出ガス低減対策

 ガソリン・LPG特殊自動車規制については、定常モードであるC2モード(7モード)が採用されているが、定常サイクルのみでは、過渡的な使用による触媒温度の時間遅れや触媒へ流入する排出ガスの非定常性による三元触媒の性能悪化を考慮できないため、使用実態に見合った排出ガス低減対策を適切に評価できない可能性がある。
 そのため米国や欧州で採用されている過渡試験サイクル(LSI-NRTC)と我が国の使用実態に基づいた試験サイクルでの排出量の比較試験を実施した。その結果、LSI-NRTCを我が国の排出ガス試験サイクルとした場合に、大気環境改善効果が期待され、かつ、国際的な排出ガス試験サイクルの調和を図ることができるため、図2に示すLSI-NRTCを導入することが適当であると示された。

 なお、LSI-NRTCよりも排出量が多くなるエンジンもあることから、C2モードについても採用を継続し、米国においてC2モードと選択制になっている7M-RMCについてもC2モードと同等のサイクルであることから、選択式で導入することが適当であることが示された。許容限度目標値については表2のとおり。

 さらに、近年のガソリン特殊自動車においてはブローバイガスの大気開放の禁止が技術的に対応可能であるため、上記と合わせてブローバイガスの大気開放も禁止することが適当であることが示された。

乗用車等における排出ガス試験方法の国際調和等

 WLTCを適用する車両については、PMR(Power to Mass Ratio)が小さい順からClass1、Class2およびClass3と区分されている。 Class1およびClass2の車両に適用される試験サイクルについては、日本に該当する車両がないことからこれまでは導入してこなかった。しかしながら、国連において新たな国際基準としてWLTPに関するUN Regulationを策定することが検討されており、このUN Regulationを日本が採択し相互承認の対象とする場合にあっては、当該試験サイクルについても導入する必要がある。
 Class1およびClass2の車両は国内で販売されておらず環境に対する影響が極めて限定的である。一方、UN Regulationを採択することで、自動車メーカーの開発期間の短縮等が図られ負担が減少し、より効率的な環境対策を行うことができるようになるため、図3のWLTC Class1およびClass2の車両に適用される試験サイクルを我が国でも導入し、UN Regulationと同様種別に応じた試験サイクルを適用するべきであることが示された。

今後の検討課題

 第十四次答申において、今後重点的に検討する課題として、PN計測法の検出範囲の下限の引き下げ、ブレーキ粉塵およびタイヤ粉塵に関する対策およびPN規制の導入も含めた特殊自動車の排出ガス低減対策が示されており、引き続き、国際基準の策定や見直しに積極的に参画、貢献した上で、国際基準調和の観点も踏まえつつ検討を行っていく予定となっている。

【参考文献】
(1) 中央環境審議会、今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について(第十四次答申)、令和2年