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コラム

社会に受け入れられるエンジン
Socially acceptable engine
大西 浩二
Koji ONISHI
本誌編集委員 / 日立Astemo(株)
JSAE ER Editorial Committee / Hitachi Astemo, Ltd.

 数年前まで自宅の近くの市で年に一度、旧い自動車のミーティングイベントが開催されていて、何度か見に行ったことがある。参加車は昭和に生産された車に限定されており、昔懐かしい車種や、知っているモデルでも初めて見る車型などがあって自動車好きにとってはいつまでいても飽きない楽しい経験だった。
 夕方になってイベントが終了すると、参加者たちがそれまで展示してあった愛車に乗り込んでエンジンを始動し、次々に会場から走り出していく。その勇ましい排気音を聞くのが最後まで会場に残っている理由の一つなのだが、音と一緒になってあたりに漂う未燃ガソリンの混じった独特の匂いに気づくと、忘れていたことを思い出した気分になった。自動車に排気対策が施されるまでは、すべての車がこんな匂いのガスをテールパイプから吐き出しながら走っていたわけだ。町中にあふれる自動車の姿が映った当時のニュース映像には匂いまでは記録されていないけれど、今の私たちからするととうてい許容できない環境だっただろう。
 自動車の排気による大気汚染とそれがもたらす健康被害の問題が国内で認識され始めたのは1960年代のことで、続く70年代に排気規制の法制化とそれに対する対応策の模索が始まり、ガソリンエンジン車については80年代に電子式燃料噴射制御による空燃比フィードバック制御と三元触媒の組合せがほとんどすべての自動車に採用された。その結果、排気エミッションのレベルは未対策の自動車に比べて文字通りけた違いに少なくなった。このことがなかったら、内燃機関で走る自動車が広く社会に受け入れられることは難しかったはずだ。
 三元触媒以外にも、キャブレータは電子制御燃料噴射に置き換わり、ディストリビュータは姿を消して、かつてはハイメカニズムとされていた4弁DOHCと可変動弁システムの組合せが一般化した。決定版ともいえるこれらのアイテムの組合せが、いつでも誰でも安心して使える今の自動車を実現している。
 このように時代に合わせて進化をとげて、自動車のパワーユニットとしての地位をほぼ独占してきた内燃機関は、昨今の電動化の流れによってかつてない大きなチャレンジを受けている。環境の変化に適応して生き残るための決定版アイテムはどのようなものだろう。あるいは数十年たっても今とさほど変わらないエンジンが使われているのだろうか。

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