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Vol.14 No.1

カーボンニュートラル燃料4
吉冨 和宣
Kazunori YOSHITOMI
エンジンレビュー編集委員/日野自動車株式会社
JSAE ER Editorial Committee / Hino Motors, Ltd.

講演紹介(1)鉄道へのカーボンニュートラル燃料の適用

 奥野ら(1)は、鉄道総合研究所とJR7社の協業による「鉄道車両におけるバイオディーゼル燃料の導入に向けた技術開発」の取組みの中で、HVOが鉄道運行に支障なく安全に使用できることを確認する試験を実施している。供試燃料は3社(Neste, Euglena, Phillips66)のHVOを、ベース軽油との混合率を変えた9種とした(表1)。HVOは流動点と目詰まり点でJIS規格を外れる燃料が有り、低温時始動やエンストの懸念がある。実験は、台上試験機において、列型ポンプ式のコマツ製11L-L6エンジン(表2)を用いて出力、燃費、排出ガスを測定した。出力(図1)と燃費(図2)は軽油同等、排出ガスはNOxに若干の差が見られる条件もあるものの同等レベルといえるため、鉄道車両への適用を目指していく。

講演紹介(2)合成ガス生成を筒内で挑戦

 本間ら(2)は、メタンと二酸化炭素を改質し、水素と一酸化炭素を取り出すドライリフォーミング反応を、高温場となるエンジン筒内で起こすことで、温室ガス回収と出力の同時発生の技術構築に挑戦した。実験は、直噴ディーゼルエンジンの吸気管からメタン濃度89vol.%の天然ガスと二酸化炭素を吸入させた。反応は、当量比の増加に対し二酸化炭素の生成割合が減少していることで確認できる。当量比2.2では、熱分解反応の関係から、水素の生成割合が一酸化炭素の生成割合よりも多くなる(図3)。一方で、当量比の増加はスモークの悪化を招くため、噴射時期を進角させた。進角した際の早期着火の安定性のため、軽油と二酸化炭素を増加させたことが、筒内温度の低下を招き、ドライリフォーミング反応が進行しにくくなった。以上より、スモーク排出と改質ガス生成のトレードオフを脱する技術の模索が今後は必要である(図4)。

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【参考文献】
(1) 奥野 敬太、高重 達郎:バイオ燃料による鉄道用ディーゼルエンジンの性能評価、2023年 第34回内燃機関シンポジウム、講演番号45 20234675
(2) 本間 有慧、陳 登沛、柴田 元、小川 英之、川邊 研、南埜 良太:ディーゼルエンジンのピストン圧縮を用いたバイオガスのドライリフォーミング反応による合成ガスの生成、2023年 第34回内燃機関シンポジウム、講演番号47 20234677