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Vol.11 No.9

排気触媒システムI~Ⅱ
細谷 満
Mitsuru HOSOYA
本誌編集委員、日野自動車株式会社
JSAE ER Editorial Committee / Hino Motors,Ltd.

講演紹介1

 小渕ら(1)は尿素SCR反応を連続的に行うことが可能な流通型反応システムを用いて、SCR触媒の新品、劣化品について未反応尿素の排出、高沸点副生成物の生成、分解挙動を調査した。チャバサイト型ゼオライトに銅をイオン交換した銅ゼオライト触媒を使用し、新品と700℃~850℃の温度範囲で酸素10%、水蒸気10%で水熱処理した劣化品を試験に用いた。図1に新品触媒下流での蓄積物と気体生成物および炭素収支を示す。図2に800℃で20時間処理した劣化触媒の結果を示す。水熱劣化により、未反応の尿素が下流に流出すること、シアヌル酸(Cy)ビウレット(Bi)等の高沸点化合物の生成を確認した。還元剤である尿素や副生成物は排気管等のデポジットに繋がる可能性があり、解析手法および試験結果が将来の触媒システム開発の一助となることを期待したい。

講演紹介2

 長澤ら(2)は三元触媒上での酸素分布の可視化を目的として、同位体ラベリングと高温反応のクエンチ(急速冷却)を組み合わせた同位体クエンチ法による検討を行った。モデル触媒としてセリア-ジルコニア(CZ)からなる板状酸素吸蔵材にパラジウムを塗布したサンプルを使用した。図3に水素還元後および酸素雰囲気後の同位体ラベリングを行った触媒断面での18O濃度の分布を示す。触媒断面における酸素同位体分布の可視化により、水素還元によりCZに酸素空孔が生成し、そこに18Oが入り込む過程(吸蔵)が観察された。また、図4図3に示される①から③の18Oのラインプロファイルを示す。活性金属としてパラジウムが担持されている周辺、および担持されていない周辺の18Oの濃度分布を数値化した。排出ガス処理のための触媒上での酸素挙動を知ることは、触媒反応促進の上で重要であり、今後の触媒開発に活用、展開されることを期待したい。

【参考文献】
(1) 小渕 存、 内澤 潤子、鈴木 俊介:尿素SCRにおける未反応尿素および高沸点副生物の排出挙動、自動車技術会2021年 秋季大会学術講演会講演予稿集、No.20216188
(2) 長澤 剛、 小林 厚史、佐藤 進、 小酒 英範、 花村 克悟、 寺田 亜美、 三島 崇生:同位体ラベリングと反応クエンチングによる三元触媒酸素吸蔵過程の可視化解析、自動車技術会2021年 秋季大会学術講演会講演予稿集、No.20216192