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Vol.12 No.1

基調講演III
下田 正敏
Masatoshi SHIMODA
本誌編集委員、元・日野自動車(株)
JSAE ER Editorial Committee / former Hino Motors, Ltd. Technical Research Center

基調講演III
講演紹介1

 米国オークリッジ国立研究所のRobert M.Wagner(1)は米国DOEのCo-Optima Initiative Teamを代表して「運輸・交通領域における脱炭素へのエンジンと燃料の共同最適化」というタイトルで基調講演を行った。本研究プロジェクトにはオークリッジ国立研究所以外の米国国立研究所や多くの大学、関連企業が参加する大きなプロジェクトである。本研究の狙いとして、エンジン最適燃焼と燃料の最適化を組み合わせるもので、図1に示すように液体燃料に主眼を置き、燃料特性やブレンドストックを変えてエンジン性能の最適化を目指す。また主導的な乗用車と物流への対処として、図2に示すようにLight-DutyとMedium/Heavy-dutyに分け、それぞれの目指す燃焼方式が示されている。

Light-Duty 短期的にはLight-Duty過給SIエンジン
長期的にはLight-Duty Multi-Mode燃焼(図3
Medium/Heavy-duty 短期的にはディーゼル燃焼
長期的にはマルチモード燃焼を含めた軽負荷の排気の改善、効率の改善

 燃料関係としては、燃料特性やブレンドストックがLight-Duty SIエンジンの性能、効率に及ぼす効果が図4にまとめられている。導入に際して、障害の少ない六つのブレンドストックが図5に示されている。13種類のMCCI(Mixing Controlled Compression Ignition)の可能性のあるブレンドストックのふるい分けの結果が図6にまとめられている。Soot とPMの低減を示すブレンドストックが図7に示されている。
 以上のようにエンジン燃焼と燃料の共同最適化は、非常に重要であるが、地味な息の長い緻密な研究であり、現在の日本においてはあまり重要視されていないように思われる。今後も注目していく必要が高いと感じられる。

第32回内燃機関シンポジウム、基調講演Ⅲ、Robert M.Wagner:「Co-optimization of fuel and engine technologies on path to decarbonization of the transportation sector」発表内容より(シンポジウム参加者にのみ公開)