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Vol.13 No.1

環境
鈴木 央一
Hisakazu SUZUKI
本誌編集委員、(独)自動車技術総合機構
JSAE ER Editorial Committee, National Traffic Safety and Environment Laboratry

 「環境」セッションではLCAや実走行CO2排出に関するものから給油時のエミッションやブレーキ粉塵測定まで、幅広いトピックが扱われた。それら5件の研究発表から、関東学院大学久地楽らによる大型BEVトラックのLCAに関する講演と、JARI金成らによる長期CO2排出量推計に関する講演を取り上げる。

大型BEVトラックの長距離輸送に関するLCA評価(20226212)
-BEVバッテリ搭載に伴う積載1t・輸送1km当たりのCO2排出量-

 カーボンニュートラル化に向けて電動化が進められているが、大型EVトラックで長距離輸送を行う場合のLCA評価を行っている。航続距離を伸ばそうとするとバッテリ搭載量を増やさねばならず、その分積載を減らさざるを得ない。それを考慮した積載あたりの評価を行っているところに特徴がある。ここでは製造段階、(原材料や部品等の)輸送段階、走行使用段階、メンテナンス段階を含めたLCA評価を行っている。そのうち、走行におけるCO2について、ディーゼル車では原油の採掘から燃料の製造、輸送、燃焼までを考慮し、EVについては国内での発電時CO2排出原単位を用いた。また、メンテナンス段階におけるCO2について、ディーゼル車ではエンジンオイル、EVでは走行用のバッテリ(その他タイヤなどは共通)の製造時CO2排出を考慮した。ライフサイクルとして、車両は10年140万キロ、積載率80%、バッテリ寿命16万キロを前提とした。EVのバッテリ搭載量と航続力の関係を図1に示す。BEV1は航続力が極端に短いが、これは積載量をディーゼル車(DV)と合わせたものである。一方、BEV5はディーゼル車と同等の航続距離となるよう多量のバッテリを搭載すると仮定したものである。この場合バッテリ搭載量は9tに及び積載量は4割以上も減少する。
 これらの条件設定により計算したトンキロあたりのCO2排出量を図2に示す。EVのデータにおける「○」はバッテリの交換時期で、搭載個数の多いものほど多数のバッテリ個数を一度に交換するため、右にシフトしていくとともに、バッテリ製造などにおけるCO2排出が多いのに加えて積載量の減少も影響して、CO2排出量は増加していく。図の結果から、航続力をある程度確保したBEV3~5では破線で示すディーゼル車を下回ることが不可能であるのに対し、BEV1ではディーゼル車を下回る。とはいえ、BEV1は航続力がディーゼル車の約1/5であり、同様の運用が困難とみられる。ただし、短距離輸送に限ればEVがディーゼル車を上回る環境性能(低CO2)を達成できる可能性を示唆するものともいえる。

自動車部門における統合対策を考慮した長期CO2排出量推計手法に関する研究(第2報)
-車種別における各種対策のCO2削減効果に関する検討-

 著者らは既報にて2050年までを対象に自動車部門の各種対策の導入によるCO2削減効果について評価を行ってきていることに対し、本報では複合効果の見直しと車種別の効果について検討を加えた。推計モデルとしては、自動車の単体対策推計モデル、交通流対策モデルに加えて、人口やGDP、燃料価格や発電構成などについて各種資料より引用してコスト等も含めて計算した。
 また、想定シナリオをしては、2013年を基準とした現状維持ケース(BaU)、従来車の燃費改善や次世代車の効率及びコスト改善を考慮した技術進展ケース(ADV)、それにMaaSやカーシェアリングを盛り込んだ総合対策ケース(INT)、総合対策ケースに2035年以降に従来車の販売禁止を盛り込んだ対策強化ケース(MEA)の4つとした。まず将来(2050年)の保有台数として、乗用車、トラック、バスなどのうち乗用車に関する各シナリオにおける計算結果のうち乗用車に関するものを図3に示す。BaUにおいても比率が変化するのは旧車の置き換えによるものであり、MEAにおいてもガソリン車やディーゼル車が少数残るのは、2050年であっても2035年以前に市販された車両の一部が残るためである。
 Tank to Wheel(TtW)のCO2排出量を推計した結果を図4に示す。BAUでも一定の削減効果が見られるのは旧車の置き換えと車両総台数の減少によるものである。次世代車導入の効果による大幅な削減がみられるADVに対し、INTでは交通流改善などによる削減効果が上乗せされた。MEAでは全体としてさらにCO2排出量削減が進むものの、トラックの改善幅は限られる。これはEVやFCVとしたときにバッテリや水素タンクの増加による重量増により単体燃費の改善が見込めず、改善は技術推移的に乗用車と同じ小型、軽トラックなどによるとしている。また、ここでの評価対象はあくまでTtWで、Well to Tankの評価や製造、廃棄を含めたLCA評価でない点に注意が必要で、そのLCA評価については今後の課題としている。

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【参考文献】
(1) 久地樂 昌紀、武田 克彦、佐野 慶一郎、河西 純一、大井 康寛、八木田 浩史、佐々木 彩音、深井 晶央:大型BEV トラックの長距離輸送に関するLCA評価-BEVバッテリ搭載に伴う積載1t・輸送1km当たりのCO2排出量-,2022年秋季大会学術講演会講演予稿集,No.20226212
(2)金成 修一、平井 洋、鈴木 徹也、伊藤 晃佳:自動車部門における統合対策を考慮した長期CO2排出量推計手法の開発(第2報)-車種別における各種対策のCO2削減効果に関する検討-、2022年秋季大会学術講演会講演予稿集、No.20226218