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コラム

AICEは次のSTEPへ
AICE goes to next step
野口 勝三
Katsumi Noguchi
本誌編集委員、本田技研工業株式会社
Honda Motor Co.,Ltd.

 最近,新聞や雑誌等の各種媒体で,産学官連携や産産学学連携といった言葉を見かけることが増えてきた。日本の自動車業界でも新たな取り組みとして,自動車用内燃機関技術研究組合(Research Association of Automobile Internal Combustion Engines )略称AICE(アイス)-1)を設立。産学官連携で,大きな成果をあげ5年が経過している。そして2019年度より,AICEはさらに次のSTEPを踏み出した。筆者は、そのAICEの活動に参加させて頂けたので,その概要を紹介する。

1.AICE発足
国際競争力の向上に寄与することを目指し,広く将来を担う人材の育成につなげるため,2014年4月1日に次の二つを理念としAICEは設立された。将来への危機感の共有が設立の原動力となり,自動車会社8社と1団体でスタート(その後9社と2団体)した。

【AICE理念】
・産学官の英知を結集し,将来に亘り有望な動力源の一つである内燃機関の基盤技術を強化し,世界をリードする日本の産業力の永続的な向上に貢献する。
・産学官の相互啓発による研究推進により,日本の内燃機関に関する専門技術力の向上を図り,技術者および将来に亘り産学官連携を推進するリーダーを育成する。
そのころ同時期にSIP「革新的燃焼技術」-2)が開始し,目指すところがAICEと一致しており,2015年1月30日AICEとJSTでSIPに関する連携協定を締結した。そしてAICEは,乗用車内燃機関の最大熱効率50%および持続的な産学連携体制の構築というSIPの目標達成に貢献することとなった。

2.AICEこれまで(5年間)の活動と成果
研究成果としては,AICEが支援を行っているSIP「革新的燃焼技術」において,目標の“熱効率50%超達成”-3)に貢献し,クリーンディーゼル,排気後処理研究も含め数多くの論文等発表した。また産のニーズを学に委託する研究プロセスが,ほぼ確立された。人材育成では,OEMから大学への派遣により,産学の技術者交流の場が増加した。多くの若手エンジニアや学生が参加し,成果報告会等で成長を実感している。そして産学官連携として,SIP(官)予算の設備を導入した4か所の研究拠点が稼働し成果を出している。さらにコンソーシアムで効果のある課題,シミュレーションモデル構築,車両・エンジン性能ベンチマーク調査などにも取り組んでいる。AICEの理念に賛同して頂いた賛助会員(2019年3月末で制度終了)の企業約80社に参加頂き,賛助会員フォーラムを9回開催し,日本の産業界へ波及している。 そして,SIP「革新的燃焼技術」プロジェクトが2019年3月に終了,今後AICEと連携しながら産産学学連携をさらに進化させていく。

3.AICEは次のSTEP(成熟期)へ
2019年度からは,サプライヤ等関連企業の皆様にも広く研究活動に参加頂けるよう,共同研究制度(共同研究企業)を創設した。その目標は,研究対象及び共同研究者を拡充し,より多くの企業に参加頂くことで,AICEの研究成果を最大化し,日本全体の産業競争力の向上をもって,社会還元を図ることである。 共同研究企業は,すべての研究に任意で参加が可能,成果物に関してはすべて共有できる。共同研究への申込・契約は、随時受付可能-1)となっている。

◆2019年度からの取り組み
・産学官の力を結集し,将来に向けての研究を加速
・将来の軸となるモデルベース開発環境の構築
・将来を担う人材育成の施策

事業概要としては,産のニーズに基づく“AICEプロジェクト研究”,“AICEモデル基盤研究”,アカデミアによる将来シーズの“萌芽的研究”の3カテゴリーで研究関連の事業を推進する。 研究のスローガンは,「地球にやさしい内燃機関 究極の熱効率,ゼロエミションに向かって」であり,様々な企業に参加頂けるよう,幅広い研究領域を設定している。 そして,モデルベース開発環境の構築による開発効率化を行い,日本の産業界の競争力強化を図る。 乗用車用エンジンの最高熱効率は,これまで約40年かかって約10%熱効率向上し40%に達した。そしてSIPでは,5年間でさらに10%向上の目途を得られた。まだまだ内燃機関は進化しようとしている。AICEでの共同研究企業新設といった,新しい共創環境が構築され,学のサイエンスと産のエンジニアリングにより,これからも日本の自動車産業と内燃機関の進化が期待される。