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5 排ガス <<EV関連>>

5.1 排ガスI(セッション番号136)

 河野ら(5-1)は,CO2排出量低減に向けた燃費基準の変遷を紹介したうえで,2019年6月にとりまとめが行われた2030年度を目標年度とする新燃費基準について紹介した.(以下,電動車両目線で紹介する.)
既導入のWLTPに沿った試験(図5-1 参照)を前提に,普及が盛んなBEVとPHEVを規制対象に加え,異なる一次エネルギーに対応するために,Well to Wheelでの評価を指向するとしている.

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しかし,カタログ等での従来の表記の継続性確保とわかりやすさから,Tank to Wheelの表記も採用し,異なる動力源でのエネルギー消費効率をガソリンエンジン車のそれ(km/L表示;Fuel Economy)に換算している.ディーゼル自動車,LPG自動車,EVとPHEVのエネルギー消費効率は以下の表5-1のとおりである.

 その上で,Well to Tank部分の効率を加味した補正により,Well to Wheelでの評価を可能としたいとしている.

5.2 排ガスII(セッション番号137)

 電動車両はパワートレインの効率が良好なため,電費の走行抵抗依存性がICEVのそれの何倍にもなることから,走行抵抗測定の要求精度が課題になる.井上ら(5-2)は試走路での環境条件によるばらつきが排除できる表題の検討の一環として,ローラ温度も制御可能なタイヤ試験機によって種々のタイヤのフリーローリング時の接線力のローラ温度依存性データ(図5-2)を基に,標準状態の値に補正する方法を提案した.

 スタッドレスタイヤを除けば問題としている温度範囲では線形であるので,各タイヤの感度係数で補正して図5-3に示す様に,温度に依存しない値に補正できるとしている.

 またICEV用のCHDYのエンジン冷却ブロアの形状についても検討し,エンジン排風の影響の精査や,各タイヤ直前の冷却風の確保の必要性などを指摘している.この点に関しては,車両下部の冷却風流れに配慮したEV用の4WD CHDY上でモード試験を繰り返した場合でも,タイヤ温度の安定時期が実路と異なり,充分な走行後も走行抵抗が漸減する不都合が生じる例があり,この解決にはローラ室の空調が重要であることが既知(5-3)であることから,ICEV用の汎用CHDYでの補正には種々の課題を感じる.(清水)

【参考文献】
(5-1) 河野良明, 宮崎俊平:我が国における2030年度燃費基準について,自動車技術会2019年秋季大会学術講演会講演予稿集,No.20196213
(5-2) 井上 勇ほか :4WDシャシーダイナモメータを用いた転がり抵抗測定の高精度化に関する研究-ローラ温度の違いが台上試験での転がり抵抗測定に与える影響について-,自動車技術会2019年秋季大会学術講演会講演予稿集,No.20196218
(5-3) 清水健一,二瓶光弥:電動車両の2軸CHDY上での“燃費”試験 ―車両固定方法と試験の繰り返し精度―,自動車技術,Vol. 68, No. 7, p60-67