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Vol.10 No.7

3 大型LNGトラック導入に向けた技術開発
Development for introducing Heavy Duty LNG trucks.
原 裕一
Yuichi HARA
いすゞ自動車株式会社
ISUZU MOTORS LIMITED

アブストラクト

 いすゞ自動車は天然ガスを石油代替の重要な燃料の一つとして位置付け、天然ガス自動車の更なる普及を目指して大型LNG(液化天然ガス)トラックの開発を進めて来た。本稿ではその技術開発の現状と大型LNGトラックの概要について紹介する。

大型LNGトラック開発概要
はじめに

 現在輸送用燃料の安定供給や低炭素化の観点から石油代替燃料の利用拡大が重要視され、天然ガスに加え電気や水素など自動車用燃料が多用化する時代となっている。
なかでも天然ガスは石油と比べて単位発熱量当たりのCO2排出量が少ない低炭素燃料であり、いすゞ自動車は天然ガスを石油代替の重要な燃料の一つとして位置付け、1993年に小型CNGトラックを発売以来27年にわたり技術開発と商品化に取り組んで来た。
天然ガス自動車には天然ガス燃料を20MPaに圧縮し気体のままで搭載するCNG(Compressed Natural Gas)と、燃料を-162℃の低温にして液化し搭載するLNG(Liquefied Natural Gas)の2種類がある。
いすゞはこれまでCNG(圧縮天然ガス)車に取り組んで来たが、航続距離の延長や燃料充填時間の短縮など使い勝手の向上を目的にLNG(液化天然ガス)車の開発にも着手した。
 LNG車は世界的には実用段階にあるが、日本での普及はこれからであり、新たな技術開発だけでなく規格・基準を含む法整備ならびにLNG燃料充填インフラの整備などの課題があり、民間の自主的事業取組みだけでは技術開発・実証が進みにくい状況であった。
 そこで国が取り組む「CO2排出削減強化誘導型技術開発・実証事業」における環境省補助事業「大型LNGトラックおよび最適燃料充填インフラの開発・実証事業」(1)へ参画し、本事業にて大型LNGトラックの普及を推進することとした。
以下に環境省事業の概要を説明する。

環境省事業とLNGトラック概要

① 事業目標
 都市間輸送時にCO2排出量を同級ディーゼル車比10%程度削減、且つ長距離走行が可能な大型LNGトラックの開発とともに最適な充填インフラを実用化のため、以下の取り組みを行った。

  • 大型LNGトラックの開発
    1回の充填で1000km以上走行可能な大型トラックを開発。
  • LNG燃料充填スタンドの建設
    LNG燃料充填スタンドを建設するための技術開発を行う。
  • 公道走行試験
    運送事業者による大型LNGトラックの営業運行を実施し環境性・信頼性等を実証する。

② 大型LNGトラック概要
 LNGトラックのベース車は既存の大型CNGトラック「ギガCNG-MPI」である。(図3-1)

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 今回製作した大型LNGトラックの車両外観写真ならびに主要諸元を示す。(図3-2表3-1
 LNG化に際しての変化点はLNG燃料装置を追加したことで、燃料はLNGとCNGの2種を搭載している。エンジンはベースとした大型CNGトラックと同じ火花点火方式のオットーサイクルエンジンで基本的に変更はない。

table.3-1 主要諸元

  LNGトラック CNGトラック
車両型式 QFG-CYJ78B改 QFG-CYJ78B
エンジン型式 6UV1-TCN
最高出力 243 kW(330PS)/1800 rpm
最大トルク 1390N・m(142kg・m)/1200-1400rpm
燃料 LNG+CNG CNG
ホイールベース 7335mm
変速機 スムーサーGx(9速・AMT)
車両全長 11950mm
車両全高 3035mm
車両全幅 2490mm
車両重量 9770kg 9710kg
最大積載量 15000kg
車両総重量 24880kg 24820kg
定員 2名
航続距離(参考) 1000km以上 500km以上

③ LNG燃料供給システムとLNG燃料容器
 大型LNGトラックの燃料供給システムを示す。(図3-3)

 LNG燃料は低温の液体であり外部からの入熱を抑制するため二重殻の真空断熱構造を有する容器内で保冷される。
 LNG燃料容器には冷却機構はなく使用過程において外部からの入熱により内部の燃料が気化していく。気化ガスによる内部圧力上昇と容器の破裂防止のために容器にはガスを大気放出する安全弁を設けている。
LNG燃料はエンジン冷却水熱により熱交換器で加温して気化させ、その後レギュレータで指定圧力に調圧しエンジンに供給する。
 LNG燃料容器は米国製の飽和式容器を採用した。飽和式とはLNG燃料を飽和状態(液化ガスが気化する臨界の温度と圧力にあること)に保持する事で内部の圧力を一定以上に維持し燃料の送り出しを行う容器である。今回は内容積307リットルの容器を2本搭載した。(図3-4)

④ 国連規則(UNR)と国際基準調和
 搭載するLNG燃料容器ならびにLNG燃料装置は国連規則No.110(UNR110:天然ガスを燃料とする自動車と燃料装置)に定める技術基準に適合している。本事業と同時期にUNR110が日本で協定規則として採用されたため、海外で普及しているUNR110適合品を導入することができた。

まとめ

 本稿では、環境省事業に向けた大型LNGトラックの開発概要について述べた。

【参考文献】
(3-1) いすゞ自動車(株):「大型LNGトラックおよび最適燃料充填インフラの開発・実証事業」平成30年度成果報告書 環境省 CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業