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Vol.12 No.1

潤滑・トライボロジー(1)(2)
三原 雄司
Yuji Mihara
東京都市大学
Tokyo City University

講演紹介(1)

 潤滑系は摩擦やオイル消費研究が多いが、本研究は騒音規制に向けた燃焼騒音とトライボロジーの相関の研究である。朝田ら(1)は燃焼衝撃の伝達経路となる主軸受部を対象として、エンジンの振動特性と主軸受部の潤滑状態の相関をEXCITE Power Unit(AVL)で解析した。時間・周波数依存燃焼騒音発生モデルはNguyenらの提唱モデル概念を利用している。図1は軸受形状と振動特性の結果で、テーパにより1.5kHz以上の周波数で加速度が小さいが、この理由として図2のようにテーパの有無による軸受の圧力分布を求めている、テーパにより粗さ接触の圧力は大幅に低下し、振動特性と粗さ接触圧増大の相関が示された。流体油膜圧力値への影響が不明瞭だが、今後、実機もしくは軸受試験機等での振動特性の検証が望まれる。

講演紹介(2)

 中小路ら(2)はディーゼルエンジンのポスト噴射による潤滑油の希釈メカニズム研究を進めており、オイルパンへの輸送経路に注視している。実験条件のうち2000rpmモータリングではオイルタンク中の希釈率は噴射時期60°で最大10%を超える結果を示し、図3中に示した②トップリング背面,④セカンドランド,⑤セカンドリング背面それぞれの希釈率を計測で明確にし、それぞれの特徴を示した。また、セカンドランドとセカンドリング背面の希釈率の結果から、燃料(図中④)の輸送経路はライナ側ではなくセカンドリング背面側(⑤)であることを実験で明らかにした。今後、フォトクロミズム油膜および燃料の可視化手法を用いるとしており、メカニズム解明が期待できる。

【参考文献】
(1) 小口 瞳史、 荻山 彪吾、三上 真人:主軸受粗さ接触がディーゼルエンジンの燃焼起因振動に与える影響、第32回内燃機関シンポジウム予稿集、No.20214822
(2) 中小路 遥人、及川 昌訓、三原 雄司、他:ディーゼル機関の燃料によるオイルの希釈に関する研究―ピストン各部からのオイルサンプリング手法と希釈油の性状について、第32回内燃機関シンポジウム予稿集、No.20214824