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Vol.12 No.1

燃料と燃焼
飯島 晃良
Akira IIJIMA
本誌編集委員、日本大学
JSAE ER Editorial Committee / Nihon University

 自動車から排出されるCO2 を低減するために、内燃機関の熱効率向上、走行抵抗の低減、電動化、燃料の低炭素化等、多角的なアプローチがなされている。燃料においては、回収したCO2 と余剰再生可能エネルギーで製造した合成燃料(e-Fuel)の活用が検討されている。
 光藤らは(1)、e-Fuelの候補として着目されている炭酸ジメチル(DMC: Dimethyl carbonate)を用いた際のコンポーネント設計およびエンジンモデルベース開発を想定し、DMCと既存燃料混合燃料の素反応モデルを作成し、評価している。既存燃料はイソオクタンとし、イソオクタン、DMCそれぞれの既存の反応モデルを組み合わせて、混合燃料の反応モデルを作成している。作成したモデルに対して、一部の素反応のアレニウス式の因子(頻度因子、温度の因子、活性化エネルギー)を変更することで、アーヘン工科大による層流燃焼速度の実験結果と合うように調整がなされている(図1)。
 作成したモデルを用いて、エンジン筒内条件を想定した燃焼シミュレーションを実施している。DMCの燃焼シミュレーション結果を図2に示す。実験結果と計算結果は良好な一致をしている。なお、現状では、DMCとPRFの混合燃料の筒内燃焼シミュレーションはできないため、今後の改良課題とされている。
 DMCの燃焼反応・燃焼特性の解明とモデル化に基づく、より高精度な計算に使用できる基礎データの充実、DMC等の新しい燃料をうまく活用したエンジンの更なる熱効率向上手法の研究等、燃料、燃焼、熱機関としての相乗効果によるCO2 低減が進むことが期待される。

【参考文献】
(1) 光藤 健太、保坂 知幸、米谷 直樹:Chaimae Bariki, Joachum Beeckmann, Heintz Pisch, Christoph Kraus, Felix Fellner, Georg Wachtmeister, 炭酸ジメチルの詳細反応モデルおよび層流燃焼速度式の構築と筒内燃焼シミュレーション、第32回内燃機関シンポジウム予稿集、No.20214845