TOP > バックナンバー > Vol.16 No.2 > エンジンを未来につなげる排気技術
排気システムは、エンジンからの排出ガスを大気へ吐出する最後の砦であり、「浄化」「消音」の環境問題と直結した製品開発が求められている。近年では、脱炭素ニーズと燃費向上のため、ガソリン車ではパワートレーンのハイブリット化により大型駆動用電池が搭載され、その搭載に配慮した製品開発が必要となっている(図1)。一方、ディーゼル車では、さらに厳格化される排出ガス規制と共に、エンジンの燃費改善による窒素酸化物(NOx)と煤(PM・PN)を浄化する排気後処理装置の更なる開発が必要となっている。
エンジンで燃焼した排出ガスはCO、NOx、THCの有害物質を含むため、触媒装着で浄化させ、また、排気弁の開弁周期に伴った脈動により排気音が発生するため、マフラを装着して低減している。
排気音の低減技術 排気システムでの騒音は、流路の断面積が大きく異なるマフラを装着し、マフラ内部で音の反射・干渉により消音している。ハイブリット車などでは大型駆動用電池のため、断面積の大きなマフラの搭載が困難になり、消音技術の高度化が必要となっている。
マフラによる消音量の予測は、従来は4端子定数法で計算をしていたが、現在はナビエ・ストークス方程式をベースとした1Dシミュレーションで計算を実施している。排気システムでは高速の排出ガスが存在する音場であり、従来のような音の波動現象の制御による消音技術だけでなく、流れと音の相互作用や高音圧特性を活用した非線形消音技術の活用が更に必要となる(図2 マフラによる排気音の低減)。
排出ガス浄化は、エキゾーストマニホールド(以下、エキマニ)に搭載された触媒により化学反応させて無害化を実施している。浄化性能の向上のため、触媒の容量アップがあるが、ハイブリット車などでは駆動用電池搭載性のため触媒の低容量化が必要で、エキマニ内部の熱流体技術による浄化性能の向上が必要となっている。
触媒は排出ガス温度が一定温度以上でないと浄化性能が低いため、エンジン始動直後はエキマニ入口から触媒まで熱の低下を抑える必要がある。一方、高負荷時は大流量のため、触媒での排出ガス流速が大きくなり、貴金属表面での反応が行えず浄化性能が低下するため、流速低減技術が求められている。
エキマニは車両への搭載上、三次元的に曲がる流路形状をしており、排出ガスの淀み領域や偏流の発生領域で熱損失や流速上昇を起こしやすく、形状適正化により、低温時から高負荷時まで熱流体制御により高浄化を達成する技術が求められている(図3 エキゾーストマニホールドでの流れ)。
ディーゼルエンジンは軽油を燃焼させ動力を得ており、排出ガス成分では特にNOxの排出が課題となっている。NOx浄化には尿素SCR触媒と尿素水を組合せた尿素SCRシステムを用いた浄化技術が主流で、排気温度、ガス流れを最適化した後処理装置の構造設計により浄化性能を確保している。
尿素SCRシステム尿素SCRシステム採用に伴い、新たな技術要素として、尿素水を排気管経路内でミキシングしNH3生成させることが挙げられる。尿素水は排出ガスの熱により熱分解、さらに加水分解触媒にてアンモニアを生成しSCR触媒上でNOxを還元反応させ無害なN2とH2Oへ分解する。
求められる後処理システム技術
排気温度を確保した低背圧尿素ミキシング構造
尿素水は排出ガスの温度によりその性状が変化する。尿素水を添加すると排気熱により一気に分解されNH3が生成されるのではなく、エンジン運転条件による尿素水添加量の変動に適合した尿素ミキシング構造を作り上げる必要がある。
特に、尿素水添加量の多い運転条件下では、排気管内部の温度が低下し、尿素水は気化せずに液状で溜まり、白く結晶化し排気管内部に滞留する。このため、後処理システムを出来る限り高い温度に維持することが重要となる。排気温度を確保することで、尿素水の結晶化抑制と冷間時のNOx排出量の低減が可能となる(図4)。
さらに、燃費性能向上のために排気抵抗の低減と尿素水を加熱分解する構造の両立が必要で、特にエンジン始動直後などの冷間時のNOx浄化性能を確保するために、ガス流れを最適化した尿素水ミキシング構造と排気温度確保を両立する技術開発が必要となる(図5)。
地球温暖化防止、大気汚染抑制、エネルギー資源活用などの観点から、自動車用エンジンはバイオ燃料や水素などの多様な燃料の使用拡大や、プラグインハイブリットなどで電動化率が増え、エンジン稼働する時間も現行より変化すると予想される。それに伴い排気システムに入るガスの成分、温度、圧力変動など、量的にも時間的にも変化し、新たな対応技術が必要になると考えられる。エンジンと大気を結ぶ最後の砦として、排気システムはエンジンと共に進化・発展していく必要がある。
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