TOP > バックナンバー > Vol.16 No.4 > 電動車両関連技術
EVの量産化に伴い、今回もモデルベース開発など生産に関する発表が目立ったが、ここではEVのトレンドを左右するかも知れない課題について紹介する。なお、バッテリの温度制御を中心とした熱マネジメントに関して、”xEVセッション”で別途紹介されているので、参照されたい。
エネルギー密度/出力密度とも良好であるLiイオン電池は、熱暴走の危険があるので、Liイオン電池を大量に搭載したEVの大量普及には、熱暴走発生の低減や発生の事前把握が重要な課題である。まず、これに関する興味深い3件の発表を紹介する。
充電曲線解析データによる初期段階での検出小鹿ら(1)は、充電曲線解析法(充電時の電池電圧プロフィール(充電曲線)を電池の等価回路式でカーブフィッティングすることで、電池の各種特性値を求める方法(2))を前述の”危険状態の事前把握”に適用するための研究を継続しておリ、金属リチウムの析出の程度で電池の安定性評価が出来ることを確認している。今回は市販電動バイクの電池(円筒形NMCセルを6並列×7直列)の6並列セルブロックを用いた充放電試験を実施し、図1に示す4レベルの安定度(軽度劣化を初期とそれ以外に2分割)に分けて検出できることを確認している。環境温度と充電レートが一部異なるAとBの解析結果は、図2、図3に示すように負極容量、SOW容量(電池容量に寄与しない固定Li量を示す値)の傾向に差があり、負極容量低下速度を判断基準に軽度劣化をLevel 1-a、1-bの2レベルに分けることを提案し、熱暴走試験で熱暴走に必要なレーザ照射エネルギーが、Bは新品セルと同一であったのに対して、Aはこれより7%低いことからレベル分けが妥当としている。分解したAの負極の表面(図4)の大部分がリチウム挿入に由来する金色であるが、放熱の悪い中心部に金属リチウムの析出と判断出来る灰色部分があり、劣化の推移が理解出来る。
同じく小鹿ら(1)は、実際にEVに搭載された際の金属リチウムの析出が熱暴走に及ぼす影響と、機械的に拘束されたセルに発生する金属リチウム析出の影響について紹介した。
図5に示すように、隣接した2個の円筒形の三元系Liイオン電池の一方のセル(新品)にレーザ照射で熱暴走を発生させ、隣接するセルへの影響を調べた。隣接セルがLiが蒸着された状態の場合、ケースの破裂・破片の飛散を伴う激しい熱暴走となった。
また、比較的安定であるリン酸鉄系Liイオン電池を用いて、ステンレスバンドでケースを固定(ケースの変形なし)した状態で充放電試験を実施し、固定の影響を調べた。固定無しの状態と新品セルを加えた熱暴走試験を実施し、その際の熱暴走に要したエネルギーを表1に示す。固定時は小エネルギーで熱暴走が発生し、安定性が低いことが分かる。表中のSOH値は非固定が114サイクル、固定は75サイクルでの値で、固定によってSOHへの影響も大きいことが分かり、搭載時の課題も大きいとしている。
前述の様に、同じトリガーでもその後の熱暴走の大きさには大きな幅がある。Podias(3)らは、三元系正極のLiイオンパウチセルを対象とした、熱暴走から電解液放出までを模擬するモデルを紹介した。外部加熱/内部短絡による熱暴走を起点に、爆発を含むガス放出までの広範な範囲を表2に示す数理サブモデルで記述している(化学反応は温度別、部位別に記述)。
熱暴走の重症度を、平均ピーク温度によって”熱暴走なし”、”内部短絡放電のみ”、”軽度の熱暴走”、”重度の内部短絡誘発熱暴走”、”重度の熱誘発熱暴走”の5クラスタに分類することを提唱している。
表3のパラメータ(Kristonのレポートを引用)を用いて、種々のシミュレーションを行った結果から得られた各パラメータの寄与度を表4に示す。トリガーエネルギー、セパレータの破壊温度、正極の活性化エネルギーの寄与度が大きいこことが分かる。連続的な条件設定をしたにもかかわらず、各クラスタの特定値付近に収束することから、支配的な物理法則が連続的なものではなく定性的な領域を形成するとしている。正極の活性化エネルギーと電解液の気化エネルギーの比は、蒸発と燃焼が同時に起こる(爆発の危険)か否かを決めるので設計時に留意すべき重要な値の例であるとしている。
SiCの普及によって、高電圧化によるEVの高効率化が図られているが、供給に不安のある希土類磁石に頼らずに高効率化を図る動きもあり、既に800V電池と外部励磁同期モータ(EESM)の採用によりレアメタルフリーと大きな高効率化を実現した市販車が実現している。
Nowackら(4)はライフサイクルでの総合的な省エネと経済性の確保を目的としたEUの次世代Electric DriveプロジェクトであるHiVEPについて紹介した。システム電圧は、絶縁の難易度とSiCの実力から1000Vとし、電力変換、モータシステム、エネルギー貯蔵、熱管理、充電システムを統合制御することで最適化を図るもので、モータに関しては同一のステータで種々のロータを比較した結果(図6)から、特性と生産容易性の点で、EESMではなくフェライト系永久磁石同期機ベースのアクティブ巻線再構成(AWR)を採用している。EESMがロータの界磁電流を制御して広い負荷条件に対して髙効率を維持するのに対し、図7に示すように低速域/高速域で固定子の界磁構成をスター/デルタと切り替える方法で、低速/高速域の双方での髙効率化を実現している。
また、インバータとモータを、電圧ブースト用にも使用することで、充電系の部品削減と合理化を図って、V2GやV2H向けの双方向動作も可能としている(図8)。省エネと経済性の視点と同時に、高電圧化による充電時間の大幅な短縮と充電ケーブルの軽量化も目的としている点は興味深い。
昨今は、充電ケーブルの煩わしさの回避や絶縁の確保を目的とした非接触充電より、搭載電池の軽減による効率改善を目的とした走行中給電が注目されているが、ワイヤレス給電(WPT)は関連する分野が広いため、種々の規制による制約も多く、実現には考慮しなければならない課題も多い。
この分野の標準化に初期段階から参画した横井(5)は、この分野の標準と規制について、歴史的な紹介を含めて系統的に紹介した。WPTはエアギャップがあるため、図9に示すように設備の性能や互換性など装置そのものに関するもの以外に、装置の周辺での人体に与える影響や他の電子機器への干渉や他の電子機器からの干渉に関する規定が必要となる。図10はこれらの課題を扱う国際機関の関係を示しており、製品に関してはISO/IECが、使用周波数の管理に関しては国際電気通信連合(ITU)が、人体の被爆限度に関しては非政府機関である国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)のガイドラインを受けてIEC TC106が、機器の干渉に関してはIEC TC77のCISPR(国際無線障害特別委員会)が扱うといった変則的なものとなっており、対応する各国の国内機関の対応も同様に複雑であるため、とりまとめには長期間を要している実情を紹介し、現状の状態も紹介している。日本が牽引していたこの分野が、気がつけば周回遅れになっているとの指摘は、似た話をほかの分野でもよく聞くようで原因が気になる。
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