TOP > バックナンバー > Vol.16 No.5 > アクティブ型副室ジェット燃焼における副室と主室同時可視化
アクティブ型副室ジェット燃焼による、高効率ハイパーリーン燃焼の実現に資するため、副室と主室の双方を可視化しつつ、アクティブ型の副室ジェット燃焼運転が可能な可視化エンジンを構築した。構築した装置を用いて基本的運転条件におけるジェット火炎の特性解析を行うために、スキップファイアリング運転、直噴インジェクタの溶損からの保護対策などを実施した。その結果、主室のリーン化が、副室および主室の燃焼形態に及ぼす影響を可視化によって明らかにした。
ハイブリッド車を含めて、内燃機関を搭載する車両からの温室効果ガスを削減するために、熱効率を極限まで高めることが求められている。そのためには、高圧縮比条件で超希薄燃焼を成立させる必要がある。しかしながら、高圧リーン化による失火、燃焼安定性の低下、燃焼速度の低下、異常燃焼の発生が課題となる。
空気過剰率が2.0を超えるようなハイパーリーン安定燃焼を実現するための手段の一つとして、副室点火燃焼(副室ジェット燃焼などとも呼ばれる)技術が注目されている。
副室ジェット燃焼は、アクティブ型とパッシブ型に大別できる。アクティブ型は、副室内にインジェクタを設けることで、主室とは独立に副室内の空燃比を調整できる方式である。パッシブ型は、副室内にインジェクタを持たないため、副室内の空燃比は主室から連絡孔を通じてのガス交換状態に依存する。そのため、アクティブ型では主室を超リーン状態にしつつ、副室内では火炎ジェット形成に適した空燃比にすることによって、全体として超希薄の急速燃焼を実現しやすくなる。
副室ジェット燃焼の特徴は、副室内の燃焼が主室の燃焼に大きく影響を及ぼす点である。そのため、副室内のガス交換、混合気形成、燃焼形態が、主室でのジェット燃焼にどのような影響を及ぼすかを明らかにする必要がある。
本研究では、副室と主室の双方を可視化可能な可視化エンジンを開発することで、上記の課題に対する各種の計測・検討を実施可能な装置の構築を行った。特に、自動車用内燃機関用途を想定して、よりリーン条件での安定燃焼を実現可能なアクティブ型副室ジェット燃焼の可視化が可能なエンジンの設計・製作を行った。
<苦労した点と工夫した点>
図1に、可視化エンジンの燃焼室部を示す。2ストローク単気筒エンジンをベースに、可視化エンジンを構築した。2ストロークエンジンは、4ストロークエンジンに比べて残留ガスが多いため、その影響を評価できるようにしなければならない、そのためスキップファイアリング運転が可能なエンジンとした。
直噴インジェクタを非水冷可視化燃焼室内に挿入するため、シールの溶損により短期間でインジェクタが破損してしまうなどのトラブルに見舞われた。そこで、モータリングによる冷却運転と、短期間のファイアリング運転を行うことでインジェクタを保護しながらファイアリング実験をする手法を構築した。
また、アクティブ型副室に使うために小噴射量に対応できる直噴インジェクタが必要になる。これについては、AICEにて単噴口の特注インジェクタの試作手配をしていただくことで対応が可能となった。このように、AICE関連企業との産学連携によって、大学単独では手配できない部品を使っての試験ができるようになった。
動画1に、アクティブ型副室ジェット燃焼可視化エンジンの運転動画の例を示す。通常の毎回転燃焼運転(2ストローク運転)を行った場合に比べて、クランク軸2回転に1回点火を行うスキップファイアリング運転を行うことで、副室内の輝炎の発生が抑えられている。
Movie.1 2ストローク運転
Movie.1 スキップサイクル(疑似4ストローク運転)
Movie.1 運転動画の例(左:2ストローク運転/右:スキップファイア運転)
構築した装置を用いて、燃焼可視化を行った例を紹介する。表1に実験条件を示す。オクタン価90のPRF (n-heptane 10 Vol.%+iso-octane 90 Vol.%) 燃料を用いて、副室の当量比を1.0一定の元、主室の当量比を0.6、0.5、0.4と変化させ、リーンでの燃焼特性を調べた。
主室当量比を変化させた際の燃焼室内圧力、圧力上昇率dp/dθ、熱発生率(HRR)、可視域の燃焼画像を二値化処理して火炎の広がり度合い(Af/Am)を解析した結果を図2に示す。また、参考として二値化処理を施した画像の例を図3に示す。主室のリーン化に伴い、全体的に燃焼圧力が低下するが、最もリーンな主室当量比0.4の条件においても、燃焼によるものと思われる圧力上昇が確認される。しかし、この時どのような燃焼状態であるのかは、燃焼室内圧力や熱発生率からは不明である。
そこで、各条件で副室と主室を可視化した結果を動画2及び動画3に示す。動画2が主室当量比0.6、動画3が主室当量比0.4の結果である。主室当量比0.6の条件では、主室に噴出した火炎ジェットによって主室の可視域で明確に燃焼が行われていることが確認される。一方で、主室当量比0.4の条件では、主室に火炎ジェットが噴出された後の火炎の輝度が小さいことに加え、熱発生率も全体的に低いことから、主室全域が十分に燃焼していない可能性がある。図2のFlame Areaでは100%に到達しているが、これは図1において“主室”と示されている直径32 mmの可視域と副室の面積を基準としたものである。そのため、可視化できていないボア径72 mmに相当する燃焼室内全体に火炎が進行しているか否かは判別できていない。今後、排ガス分析や筒内分光分析を併用することで、これらの燃焼状態を詳細に調べる予定である。
Movie.2 主室当量比0.6における燃焼可視化動画
Movie.3 主室当量比0.4における燃焼可視化動画
本研究では、アクティブ型副室ジェット燃焼の特性を調べるため、主室と副室の両方を可視化するエンジンを構築した。今後、本研究で構築した装置を用いて、副室仕様、副室内ガス交換状態、副室内混合比、燃料性状などが副室内火炎形成および主室でのジェット燃焼特性に及ぼす影響とその理由を詳細に調べる予定である。
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