TOP > バックナンバー > Vol.16 No.5 > 微細気泡を含んだ潤滑油による内燃機関の摩擦損失低減の可能性
次世代の新燃料に向けた内燃機関の熱効率向上には損失の低減が重要である。このうち、摩擦損失低減はしゅう動面形状や表面性状の変更、表面コーティング等によるところが多いが、潤滑油の低粘度化や超高粘度指数の”フラット粘度オイル“など、潤滑油による低減も大きい(1)。今回のピストン―シリンダ系やクランク―軸受系の摩擦は、流体潤滑―混合潤滑領域のしゅう動状態が多く、摩耗・焼付き及びオイル消費などに注意を払えばこの潤滑領域での摩擦低減は重要となる。筆者が着目した微細気泡を含ませた潤滑油は、運転条件に依るが10 %以上の摩擦低減効果も得られた。ここでは単気筒エンジンおよびエンジン軸受での摩擦低減効果について紹介したい。
発生装置は旋回流式やスタティックミキサ式など様々な方法がありそれぞれ有用だが、この研究で用いた微細孔式は、基本形状は長さ200 mmで直径20 mmの円筒で、多孔質材の内径に空気を送り、数10 µm以下のマイクロバブル(MB)や1μm以下のウルトラファインバブル(UFB)等の微細気泡(FB)を発生でき、円筒体を連結した発生表面積の調整も可能である(図1)。ピストン摩擦力計測用単気筒エンジンへの気泡含有潤滑油の供給回路は、オイルタンクとメインギャラリ間の気泡発生装置によって微細気泡を潤滑油に発生させてシステム全体に循環させた(図2)。供給ガスは空気とし、潤滑油は0W-20を使用した(2)。
浮動ライナエンジンはボア・ストローク80.5mm × 88.3mmの単気筒ガソリンエンジンである。摩擦力計測装置は(7)アウターライナと(8)インナーライナの二重構造を持ち、アウターライナとエンジンブロック間のスラスト・反スラスト側の上中下の各2か所の6か所、合計12か所に(2)3分力センサを取り付けた(図3)。軸受試験装置は、試験軸をモータ(ⅰ)で回転し、試験部(ⅲ)で発生した軸トルクはトルクメータ(ⅳ)で計測する。トルクリミッタ(ⅴ)も備え、焼付き時に動力を遮断する。軸受荷重は油圧加振機(ⅵ)によって試験ジャーナル部へ作用させ、この荷重をロードセル(ⅶ)で計測する(図4)(3)。
通常の潤滑油とシリンダボア(シングルホーニング)の組合せ(ALL STDと記載)と、気泡含有潤滑油(STD+FB)と通常ボアの実験では、気泡発生装置の表面積を3倍にした仕様(FB w3-1)を用いた(図5)。また、ボアにプラトーホーニングライナと標準油(Plateau+STD)と、FB含有潤滑油(Plateau+FB)でのFMEP(摩擦平均有効圧)の比較も行った。 ALL STDの場合、1000 rpmで3%悪化するが、1500、2000 rpmでは9~10%の低減効果が得られた(図6)。一方、プラトーライナでは、1000 rpmで17%、1500 rpmや2000 rpmでも2~3%悪化した(図7)[2]。
図8は1000rpmで軽荷重(軸受面圧4~15MPa)の実験結果で、摩擦低減効果は5MPaで3.4%であったが、面圧の増加ととも1~2%となり、FBの有無による効果は減少した。一方で、3000rpm以上では摩擦低減効果は増加し、図9に示した5000rpmでは面圧6MPa程度で14.4%が得られ、面圧が増加しても10~12%の摩擦低減効果を維持した。またFBの潤滑油中への混入による焼き付き特性も懸念されるが、本実験では通常の潤滑油(FB w/o)と気泡含有潤滑油(FB w/3-1)の焼付き面圧の差は5%程度で、現時点では摩擦の低減効果の大きな背反事象にはなっていない[3]。
本研究での微細気泡の特徴をまとめると、表面性状(粗さ)により摩擦低減特性が変わり、エンジンでの結果から、油膜厚さが厚くせん断速度が高い条件で効果が高いなど微細気泡の粒径分布との密接な関係が伺える。液体中の気泡の挙動の解明は1978年ごろからの微細気泡の様々な効果の研究、数ミリ~数十ミリの気泡の研究を経て1990年代からファインバブルと呼ばれる1mm以下の気泡の効果の様々な研究と開発が進んでいると聞く。内燃機関への応用は近年成果を示してきたが、作動油も含めた様々な潤滑油の供給方式や面圧やしゅう動速度で運転される際の摩擦低減メカニズムは、油中の微細気泡の状態把握が現状難しく、引き続き微細気泡の状態を詳細に調べて摩擦低減効果の最適条件の明確化に繋げていきたい。
本研究の推進に協力をいただいた大学院生の星野秀介君に感謝の意を表します。
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