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TOP > バックナンバー > Vol.15 No.7 > 先進ガソリン機関技術Ⅰ
火花点火機関のカーボンニュートラル化技術の一候補として、水素エンジンが挙げられる。水素はその特性(低い最小点火エネルギー、高い燃焼速度等)によって、火花点火機関に用いる際には、火炎伝播特性、プレイグニッション、バックファイア、ノッキング等の異常燃焼等の特性理解とそのモデル化が重要になる。そのためには、水素エンジン筒内での現象を詳細に観察することが必要である。
和泉ら(1)は、「過給直噴水素エンジンの燃焼可視化」と題して発表を行った。排気量998 cm3、圧縮比8.5の2輪車用4気筒エンジンをベースに製作された直噴過給水素エンジンを用い、燃焼室内をボアスコープで可視化することで火炎伝播及びプレイグニッションの観察を試みた。エンジンの外観を図1に、ボアスコープによる可視域を図2に示す。
燃焼可視化には、紫外域に感度を持つ高速度カメラを用いて、309 nmのバンドパスフィルタを取り付けることでOHラジカルの発光を撮影している。比較として、イメージインテンシファイアによる撮影も行っている。
図3に、10000 rpmにおいて空気過剰率λ=2.0で運転した際の燃焼を、撮影速度20000 fpsで撮影した際の写真を示す。
UVカメラの方が、イメージインテンシファイアに比べて輝度は低いが、ノイズが少なく鮮明な画像になることが報告されている。なお、λ=2.0よりもリーン側では画像輝度が低く撮影が困難であった。
λ=1.0において、異なる回転速度での燃焼撮影を行った結果を図4に示す。特に高回転側では火炎伝播と思われる発光領域が燃焼室内で複雑な形状に成長する様子が確認されている。これは、筒内の流動や、水素濃度の相違によるものだと考察されている。火炎伝播形態やそのサイクル変動の特性等が今後の研究で明らかになることが期待される。
この他、プレイグニッションが発生した条件での燃焼室内観察を行っており、その結果からは、排気バルブ方向に発生起点があるのではないかと考察している。
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