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Vol.15 No.7

ディーゼルエンジン
吉冨 和宣
Kazunori YOSHITOMI
JSAEエンジンレビュー編集委員/日野自動車株式会社
JSAE ER Editorial Committee / Hino Motors, Ltd.

講演紹介(1)ニューラルネットワークを取り入れた物理モデル精度向上への挑戦

 池戸ら(1)は、エンジンのさらなる排出ガスの低減や燃費向上にはPCCIのように緻密な制御を要する燃焼が必須となり、エンジン筒内の状態を正しく推定するための様々な状態量のモデルが必要と考える。制御方法としての課題は、マップを用いる場合では複雑化するシステムに対応する工数の増加、物理モデルを用いる場合ではECUの演算負荷が高くなるなどが有る。これらを解決するため、物理式の未知数をニューラルネットワーク(以下NN)により推定する手法を提案する。今回は、2.8L 4気筒ディーゼルエンジンのインマニ温度を推定した。基礎方程式を吸入空気とEGRガス混合時のエネルギー保存則とし、未知数はEGRガスの温度・質量流量、ガスと壁面の熱授受量とした。この未知数にフィードフォワード型NNを適用し推定モデルを作成した(図1、図2、図3)。学習データおよびテストデータに対する精度、演算負荷を考慮して中間層のノード数を40とした。ガスと壁面の熱授受量の推定値は、本モデルの誤差低減には有効であることを確認できた(表1)。

講演紹介(2)オフロードエンジンの規制動向と対応技術

 Bernhard Raserら(2)は、オフロード用エンジンの将来規制に向け、排出ガス試験サイクルと実使用におけるNOxおよびCO2の削減の可能性を検討した。オフロード用エンジンに関しては、CARBがTier5の草案を公表している(表2、表3)。また、AECCはStageⅤのオフロード機械の実使用時のNOx排出量を調査し、機械の種類によってエンジン負荷パターンが異なるため、排出量の差が大きいことを示している(図4)。
 今回の研究では、130kWのオフロード用エンジンを対象に、3種類の後処理装置(図5)の性能を、NRTC(Non-Road Transient Cycle)、LLC(Low Load Cycle)サイクルに対し、試験とシミュレーションを実施した。その結果、3種類の後処理装置の性能は、NRTCサイクルのColdではわずかに差があるものの、重み付け係数が低いため、NRTCサイクル全体としては大きな差が出ない。一方で、LLCサイクルでは、アイドル時の排気温度が低い仕様もあり、ヒータのような追加デバイスも有効であることを示唆できた。

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【参考文献】
(1) 池戸 隆人、脇坂 佳史:機械学習を活用したディーゼルエンジン吸気系におけるガス温度の推定、公益社団法人自動車技術会 2025年春季大会学術講演会講演予稿集、20255028
(2-1) Bernhard RASER、Hannes NOLL、Joachim DEMUYNCK、Dirk BOSTEELS:Proof of Advanced Emission Control Systems and Thermal Strategies for future NRMM Regulations、公益社団法人自動車技術会 2025年春季大会学術講演会講演予稿集、20255029