TOP > バックナンバー > Vol.16 No.3 > 熱抵抗の小さな熱電発電デバイスによる排ガスからの熱回収
熱電発電システムを用いた廃熱発電は、可動部がないことなど車載に適した特性を持つことから期待される声が高いが、実験による発電試験の報告例は必ずしも多くない。既報の多くの発電出力はmWのオーダーに留まり、シミュレーション研究と比べて実際に得られている発電出力は小さい。本研究では、熱電発電デバイスの基本性能評価および車載条件下における熱電発電廃熱回収システムの工学的評価を行い、消費熱量に対する発電効率は20%弱の高い値を得た。しかし、通過熱量に対する効率は2%程度となり、通過する熱を系外に捨てずに系内で活用する方式の導入が重要であることがわかった。
熱電デバイスを用い、触媒通過後の排気廃熱を想定した発電性能試験を実施した。参加しているAICEプロジェクトでは廃熱の有効活用を通じた総合熱効率向上を実現するため、熱電発電と有機ランキンサイクル(ORC)発電の複合発電システムを検討している。熱源は過給機後の吸気、触媒後の排気廃熱、エンジンの熱であり、これらを冷却水の代わりに低沸点のORC冷媒で回収する。熱電発電デバイス単体の発電効率は必ずしも高くないが、デバイスを通過した熱を系の外に漏らさず車両内で使い尽くす前提の下で、より多くの熱量が熱電システムを通過するように、熱抵抗の小さい熱電デバイスを作成し、市販品のペルチェデバイスと比較しつつ、車載を想定した評価試験を行った。
低熱抵抗型TEGデバイス低熱抵抗型デバイスとして、伝熱面厚さを0.5mmとした薄肉アルミナデバイス(Thin AlO)、アルミナより10倍ほど熱伝導率の高い窒化アルミ(0.76mm)を伝熱面とした窒化アルミデバイス(AlN)を用いた。電気ヒータ付き金属ブロックを高温側、水冷熱交換器を低温側として、各デバイスの1枚あたりの基本性能を評価した。図1に示すように窒化アルミデバイス>薄肉アルミナデバイス>量産デバイスの順に発電出力が大きい結果を得た。各デバイスで同じ温度差の場合でも、低温側の温度が低いほど発電出力が高い。消費した熱量に対する発電効率は、デバイスに与えられる表面温度差が大きいほど、低温側の温度が低いほど高効率となった。一部の条件での結果を除いて、熱抵抗が小さなデバイスほど高効率な結果となり、窒化アルミデバイスの効率は約4%であった。
排ガスからの廃熱発電試験熱電発電デバイスを4枚並列に並べ(図2)、想定している乗用車の排気量の1/32の高温空気(65L/min(1.35g/s))から熱を回収して発電する試験を行った。図2右に窒化アルミシステムの発電出力をまとめた。デバイス表面温度差が162.6℃のときに最大で11.6Wを得た。実際の排気ガス流量では冷却水温度が20℃のとき348Wの発電出力を見込めることを示唆している。消費した熱量に対する発電効率は窒化アルミシステムが大きく、最大で17.8%に達したが、通過熱量に対する効率に換算すると2%前後に留まる結果となった。つまり入熱量の80~90%程度は発電に使用されず、低温側へ素通りしている。より高効率な熱回生、熱エネルギー利用のためには、この熱を系外に放出せずに系内に閉じ込めて循環させるシステム構成を検討する必要がある。
非定常条件でのシステムの応答実環境では排ガス温度や流量が時々刻々と変化する。実車を用いた過渡的な廃熱条件で熱電発電システムの出力を評価した結果を図3にまとめた。エンジン回転数、トルクを30秒間に単調増加させた際の発電出力結果を薄肉アルミナシステムについて纏めた(図3左)。排ガス温度は急速に変化したはずであるが、熱交換機入口温度は必ずしも応答が早くなく、徐々に上昇し続けた。そのためシステムの発電出力も熱交換器温度に応じて徐々に上昇する結果となった。通過熱量に対する効率はこの場合も2%前後となった。実車試験では薄肉アルミナデバイスの高温面・低温面の温度差が大きく、かつ、消費された熱量が少ない結果となり、定常試験と異なる結果となった。実車試験は機会が限られており、この違いの要因の調査に至っていないが、実車試験でも素通りした熱を捨てずに系に留めることの重要性を確認できた。
本研究では、熱電発電デバイスの基本性能評価および車載条件下における熱電発電廃熱回収システムの工学的評価を行った。熱電システム自体の変換効率は従来の報告と比べて高く、消費熱量に対する発電効率は最大で17.8%となった。しかし、冷却水への熱流出を考慮すると、デバイスを通過した熱量に対する発電効率は約2%に留まる結果となった。すなわち、冷却水が受け取った熱をラジエータ等で系外に放出すると、廃熱エネルギーの多くを捨てることに繋がる。そのため、高効率な熱エネルギー利用のためには、システム内で熱を系外に出さない工夫が必要であると考えられる。熱抵抗の小さな熱電発電システムに多くの熱を流して効率よく発電しつつ、システムを通過した熱を系外に出さずに活用することが重要である。
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