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Vol.16 No.3

EHCを用いたシリーズハイブリッド車における触媒温度維持とそれによる効率改善の可能性検討
Investigation of Catalyst Temperature Maintenance and Its Potential for Efficiency Improvement in a Series Hybrid Electric Vehicle Using an Electric Heating Catalyst
村上 朋希、水本 郁朗、大森 浩充
Tomoki MURAKAMI, Ikuro MIZUMOTO, Hiromitsu OHMORI
慶應義塾大学、熊本大学
Keio University, Kumamoto University

アブストラクト

 シリーズハイブリッド電気自動車(SHEV)において、エンジン始動停止回数の低減により燃費向上を図るロバストエンジン制御が提案されている(1)。しかし、始動停止周期の拡大に伴い触媒温度が低下し、再始動時に暖機燃焼が作動することで、燃費向上効果が制限されるという課題がある。本研究では、この課題に対し、電気加熱触媒(EHC)を併用したロバストエンジン制御手法を提案した。1回目のエンジン始動時の暖機燃焼は許容し、その後のエンジン停止中にEHCを用いて触媒温度を維持することで、2回目以降の暖機燃焼の回避する。数値シミュレーションの結果、暖機燃焼の発生回数を低減し、従来制御と比較して燃費を0.78%改善できることを確認した。

触媒温度とエンジン制御のトレードオフ解消に向けて
背景と課題

 ハイブリッド電気自動車(HEV)は、エンジンとモータを組み合わせることで高効率化を実現する一方、エンジンの頻繁な始動停止により触媒温度が低下しやすいという課題を有する。三元触媒は一定温度以上でなければ浄化性能を発揮できず、触媒温度が低い状態でエンジンを始動すると暖機燃焼が作動する。この暖機燃焼は排出ガス低減に有効であるが、燃料消費量の増加により燃費向上効果を低減させる要因となる。そのため、触媒温度を適切に維持しつつ燃費性能を向上させる制御手法の確立が求められている。本研究では、 SHEVのシミュレーションモデルを対象とする。 SHEVの概略図を図1に、モデルにおける運転条件を表1に示す。

従来手法と問題

 エンジン始動回数の低減を目的とし、SOCの上下限を設定したロバストエンジン制御が提案されている(1)。本手法では、エンジンの運転と停止を一定周期で切り替えることで始動回数を抑制し、燃費向上が確認されている。しかし、始動停止周期の拡大によりEV走行時間が長くなると、その間に触媒温度が低下し、再始動時に暖機燃焼が作動する。すなわち、エンジン始動回数低減と触媒温度維持の間にはトレードオフ関係があり、本手法では両立が困難である。
 本研究では、MATLAB上に構築したモデルを用いて検証を行う。ロバストエンジン制御を適用し、実走行を模擬した走行パターンに基づくシミュレーション結果を図2に示す。本手法における燃費は29.44 km/Lである。

提案手法

 暖機燃焼を回避することを目的として、EHCを併用したロバストエンジン制御手法を提案する。本モデルでは、エンジン始動時に触媒温度が280℃以下である場合に暖機燃焼が作動する。提案手法では、1回目のエンジン始動時における暖機燃焼は許容し、その後のエンジン停止中にEHCを用いて触媒温度を維持する。これにより、2回目以降のエンジン始動時における暖機燃焼回避を図る。EHCは触媒温度が285℃以下となった場合に作動し、必要最小限の電力で温度を維持するよう制御する。本手法により、エンジン始動停止周期の拡大と触媒温度維持の両立を図る。
 EHC併用ロバストエンジン制御のシミュレーション結果を図3に示す。提案手法における燃費は29.67 km/Lである。

結果と意義

 シミュレーションにより提案手法を評価した結果、EHCを用いて触媒温度を維持することで、2回目以降のエンジン始動時における暖機燃焼を回避できることを確認した。その結果、暖機燃焼の発生回数が減少し、燃料消費量が低減されることで、ロバストエンジン制御と比較して燃費が0.78%改善した。これは、エンジン始動停止回数低減による効率向上と、触媒温度低下抑制を両立したことによるものであり、提案手法がHEVにおけるエネルギーマネジメントの高度化に寄与することを示している。

まとめ

 本研究では、HEVにおけるエンジン始動停止回数低減と触媒温度維持のトレードオフに着目し、EHCを併用した新たな制御手法を提案した。ロバストエンジン制御によりエンジン始動停止回数を低減する一方で、EV走行中にEHCを用いて触媒温度を維持することで、エンジン再始動時の暖機燃焼回避を図った。その結果、暖機燃焼の発生回数が減少し、燃料消費量の低減による燃費向上を確認した。以上より、提案手法は触媒温度管理とエネルギーマネジメントの両立に有効であることを示した。今後は、EHC本体および関連部品の重量やコストを含めたシステム全体での評価を行うことで、より実用的なエネルギーマネジメントの実現を目指す。

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【参考文献】
(1) 野﨑 凌、川元 裕登、水本 郁朗、ロバスト予測制御に基づくHEVのエネルギーマネジメント、計測自動制御学会論文集、vol. 60, no. 3, pp. 160–167, 2024.