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Vol.16 No.4

次世代の燃料・潤滑油・トライボロジー技術
渡邊 学
Manabu WATANABE
本誌編集委員
JSAE ER Editorial Committee

講演紹介(1)

 福田ら(1)「バイオディーゼル燃料の多成分サロゲートモデルの開発」と題する報告で、バイオディーゼル燃料に対応する多成分サロゲートモデルを開発し、液相・気相を分離し、実燃料組成に基づく代表成分を設定することで、複雑な変換を用いず燃料特性を再現可能とした。詳細反応機構を組み込み、CFD解析とエンジン試験で検証し、着火遅れや排出物挙動を高精度に予測できることを示した。
 本研究の特徴として、燃料の詳細な組成情報から13成分サロゲートを自動構築できるようにしたことがある。またこれはバイオディーゼルとHVOの両方へ適用できることをしました。さらに詳細な祖反応モデルをベースにして、簡略化反応機構に縮約し、3D-CFDに実装して燃焼計算をしている。
 このモデルの特徴として、以下を挙げている。
① 各燃料の蒸留曲線とサロゲートモデルがほぼ一致しており、燃料の揮発特性が適切に表現できている。(図1)
② 着火時期、熱発生率ピーク、筒内圧力履歴について実験とCFDが良好に一致した。特にB7・HVOとも、燃焼中心時期を概ね再現できた。(図2)
③ 排出物については、NOxおよびTHCは実験結果との相関が良好であり排出傾向を適切に表現できていることが分かる。しかしながら、すす発生についてはその傾向を再現するが、SME50では過大評価しているため改善の必要があるとしている。(図3)
④ 計算コストは実用レベルだが更なる低減が求められるとしている。

講演紹介(2)

 脇坂ら(2)は、「ディーゼル代替アルコール拡散燃焼技術(第4報)-二燃料噴射の軽油割合低減効果-」と題する報告において、アルコール噴射弁の針弁内部に流路を作り、着火源の軽油を流すことで、1ノズルで同一噴孔から2種類の燃料を噴霧する2燃料噴射弁の開発状況を報告している。今回の第4報では軽油の流路にオリフィスを作成して主噴射中の軽油の噴霧量を減らす検討をした(図4)。これにより軽油割合が高負荷より高くなる低~中負荷で、軽油比率を減らしてアルコール主体にする(図5)ことで、燃焼をよりクリーン化し、すすの排出を大幅に抑制できることを示した。特に EGR時のsmoke悪化を大幅に改善できた。本報告ではすすが減少した理由を解析しており、その一つとして、改良型ノズルでは着火しづらいエタノール比率が増加したことにより主燃焼の着火遅れ時間が増加したことを上げている。これにより主燃焼初期で予混合的燃焼割合が増加し、拡散燃焼的割合が減少したことから、すす生成量が減少したと推測している(図6)。さらには筒内平均ガス温度も高くなっていることから、生成したすすの酸化も促進され、これらの効果ですす排出量が減少したと結論付けている。

講演紹介(3)

 水素エンジンは化石燃料エンジンより多くの水を発生させ、冬季にはオイル乳化を起こしやすい。伊東ら(3)は、「水素エンジンにおいて乳化したエンジンオイルの水分蒸発要因に関する研究」と題する報告で乳化したオイルからの水分蒸発について検討した結果を報告している。伊東らは、前回の報告で乳化オイルからの水分蒸発に油温や液面面積などが影響することを示した。本報では、新たに湿度と容器形状の影響を調査し、重回帰分析により各因子の水分蒸発への寄与度を評価した結果を報告する。実験装置は図7に示したようなもので、実エンジンを模した様々な条件をパラメータとして変更させた実験を行い、重回帰分析により各因子の寄与度を評価した。その結果、乳化オイル中からの水分蒸発において、油温と保持時間が支配的な因子であり、容器(オイルパン)の形状は副次要因であった (表1)。油温と時間の寄与が大きいことから、水分蒸発を促進するためにオイルヒータの利用が有効としている。また、容器形状による差が見られたことから、実機オイルパン内の状態についても今後調査の必要があるとしている。

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