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Vol.16 No.5

実験プロセスの標準化と高速データ収集を実現する自動特性評価プラットフォーム
Automated Property Evaluation Platform for Standardized Experimental Processes and High-Throughput Data Collection
宮島 拓也、小野 寛太
Takuya MIYAJIMA, Kanta ONO
大阪大学
The University of Osaka

アブストラクト

 新規材料の開発では、化学的評価・機械特性評価・データ整理の各工程に多くの時間と人手を要する。また、手作業に起因する結果のばらつきや、探索できるプロセス条件の範囲が限られることも課題となっている。本稿では、光造形3Dプリンターで作製したUV硬化樹脂を対象に、協働ロボットを用いてラマン分光と引張試験を連携し、同一試験片から化学構造と力学特性を自動取得する実験基盤(1)を紹介する。取得したスペクトルを機械学習で解析することで、成形条件や後硬化条件が材料構造を介して強度に及ぼす影響を解釈可能にし、従来は経験に依存していた条件探索をデータに基づいて進める。これにより、材料開発の効率化と再現性向上に貢献することを目指す。

分光計測・力学試験・機械学習を一体化した自動評価プラットフォームの開発
材料評価における実験自動化

 自動車産業では軽量化や電動化に対応した新規材料の開発が急務となっているが、化学的評価・機械特性評価・データ整理には多くの時間と人手を要する。加えて、手作業に起因する結果のばらつきや、探索できるプロセス条件の範囲が限られることも課題となっている。本研究では、6軸協働ロボット・ラマン分光計・引張試験機を840 mm × 900 mmのアルミフレーム上に一体化した小型自動評価プラットフォームを開発した(図1)。同一試験片に対して分光計測と引張試験を無人で連続実施することにより、従来の手作業では困難であった網羅的なプロセス条件の探索と、高信頼性データの取得を同時に実現する。

安定した連続測定を支えるハードウェア

 試験片プレート(図2(a))は1枚あたり10本の試験片を収納でき、プレートホルダ(図2(b))に最大9プレートを格納することで、計90本の試験片を連続処理できる。ロボットアームの手先にはベアリング機構を内蔵し(図2(c))、試験機への装着時に生じる引張方向の負荷を吸収することで試験片の損傷を防止する。把持機構(図2(d))の下部バイスは毎回一定のクランプ力で試験片を固定する設計とすることで、測定開始前の初期状態を均一に保ち、試験の再現性を確保する。各要素は3Dプリンター製部品と汎用部品を組み合わせて構成されており、部品の再製作・交換が容易で、システムの再現性・保守性に優れる。

協働ロボットによるラマン分光・引張試験の連続測定

 自動計測は①試験片のピックアップ、②ラマンスペクトルの取得、③引張試験機への装着と引張試験、④破断片の除去という4ステップで構成され、6軸ロボットアームが一連の操作を自動実行する(動画1)。取得したスペクトルデータおよびS-S曲線はリアルタイムでデータベースへ自動記録される。システムの計測精度を検証するため、熟練作業者による手動操作との比較実験を実施した。最大応力および破断応力のいずれについても、F検定によりばらつきに有意な差は認められず(F値:最大応力1.60、破断応力3.24)、本システムが専門家による手作業と同等の再現性を有することが確認された。

Movie.1 ラマン分光・引張試験の連続測定の様子

機械学習によるプロセス-構造-特性の解析

 自動収集したラマンスペクトルと引張強度データに2種類の機械学習モデルを適用した。PLS回帰(部分的最小二乗回帰)を用いて、ラマンスペクトルから引張強度を予測した(図3左)。PLS回帰は、多数の波数情報を少数の潜在成分に圧縮しながら、目的変数である引張強度との関係をモデル化する手法である。これにより、スペクトルのどの波数領域が強度と関係するかを定量的に解析でき、未反応モノマーの減少とポリマーネットワークの形成が強度向上に寄与することを特定した。
 次に、ランダムフォレスト(RF)を用いて、プロセス条件からTP scoreを予測した(図3右)。TP scoreは、PLS回帰により抽出された、引張強度の予測に関係するスペクトル変化を表す指標である。さらに、構築したRFモデルの特徴量重要度の解析により、後硬化温度がTP scoreの予測において最も重要なプロセス因子であることが示された。二つのモデルを組み合わせることで、プロセス条件が化学構造を介して強度と関連する一連の関係性をデータから自動解析できる。

まとめ

 本研究では、ロボットと分光計測、引張試験を統合した自動評価プラットフォームを開発し、分光計測から力学試験・データ蓄積までを一貫して自動化することに成功した。手動操作と同等の計測再現性を維持しながら、大量の試験データを効率よく収集できることを実証した。機械学習との組み合わせにより、プロセス条件が化学構造を介して機械的特性に影響する一連の関係性をデータから解析できることを示した。
 今後はベイズ最適化と連携させ、物理的解釈性を保ちながら、目標特性を実現するプロセス条件をAIが自律的に提案・探索する逆解析への展開を目指す。本システムは光硬化樹脂に限らず、自動車用途の多様な材料への展開が期待される。

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【参考文献】
(1) Takuya MIYAJIMA, Yusaku NAKAJIMA, Kazuho SAEKI, Masao YANO, Kanta ONO, "Automated and Interpretable Experimental Platform for Process-Structure-Property Analysis via Raman Spectroscopy", AI4X – Accelerate Conference 2026, 2026年6月
【さらに学びたい方へ】
(1) 一杉 太郎編、マテリアル×機械学習×ロボット : 進化するマテリアルズ・インフォマティクス(2024)
コメント:材料開発にロボット技術を活かし、自動実験システムを構築する方法が具体的な事例とともに紹介されている。
(2) 森下 光之助編、機械学習を解釈する技術 予測力と説明力を両立する実践テクニック
コメント:機械学習モデルの解釈に関する複数の方法が紹介されている。