TOP > バックナンバー > Vol.16 No.1 > 第1章 特集:ミュージアム探訪(Honda Collection Hall編)
近年、電動化を含め、自動車技術の発展の方向が急速に変化する中、日本が得意としてきたものづくりは変わらずに強みとして重要だと考える。このような時期だからこそ、先人たちが歩んできた技術開発の歴史を振り返り、温故知新に立ち返ろうと編集委員会でこのミュージアム探訪企画を決定した。そして、第1弾(日産エンジンミュージアム)、第2弾(日野オートプラザ)に続き、今回第3弾として「ミュージアム探訪」(Honda Collection Hall)を紹介する。ホンダは、創業当初より夢を追いかけ、挑戦を続けてきた。新技術とエンジンの研究開発、F1をはじめとするレース活動等多くの軌跡が、このコレクションホールには展示されている。この特集号は、読者の皆様に技術開発やものづくりの楽しさを感じて頂き、新たな挑戦への意欲を持つきっかけになればと考えている。そして、このHonda Collection Hallに訪れて、自分の目で展示品を見たいと感じて頂ければ幸いである。今回の探訪で、過去に経験した思い出深い展示品に会うことが出来た本誌編集委員から、その当時の懐かしい思い出の回顧録や感想を執筆して頂いた(第6章)。そして、筆者が開発を担当したエンジンや車両も幾つか有り、その開発当時の振り返りも含め紹介したいと思う。(野口勝三)
エントランスを入るとそこには、本田宗一郎氏直筆の「夢」の文字が刻まれたガラスのモニュメント、ピストンリングをモチーフとした、夢リングが飾られている(図1)。そしてそのリングの奥にホンダを代表する製品やレーシングマシン、乗り込み可能なHondaJet EliteⅡの実物大インテリアモックアップモデルが目に入る。
HCHは、ホンダの創業50周年を記念し、ホンダの原点をお客様に伝える施設として1998年3月に設立された。新たに2024年3月1日にリニューアルオープンし、館内は四つのフロアに分かれ(図2)、それぞれのコンセプトに合わせた調光のシックなデザインが各フロア施されている。各時代の特徴をわかりやすく展示するとともに、四つのテーマからなるコレクションホールオリジナル楽曲が、各フロアの背景音楽(BGM)として流れ、来館者はホンダが歩んできた「夢と挑戦の物語」のストーリーを体感できる構成となっている。展示品は厳選され、全方位から鑑賞できるレイアウトに刷新されており、パネルには語り告げられた創業者の言葉などが記載され、そのフォントや照明にも工夫が凝らされている。ガイドツアーが開催されており、今回の探訪では、その案内をスタッフの方にして頂き、とても分かり易く、興味深い説明を聞くことができた。また、ホンダの夢と挑戦を追体験できる音声ストーリーガイドが用意されており、スマートフォンで物語を体感できる。展示品を通じて、ホンダが歩んできた軌跡を辿り、その時々にホンダが如何に考え、そして果敢にどう行動したかを追体験して頂ければと思う。
入場料は、無料(別途モビリティリゾートもてぎへの入場料・駐車料必要)、アクセスその他詳細は、参考文献(1)を参照願いたい。(野口勝三)
今回訪問したホンダコレクションホールは、ホンダが造ったモビリティリゾートもてぎ(2)の中にある(図3)。水戸と宇都宮の中間にあるこのリゾートの中心は、1.5マイルのオーバルコースとロードコースを併設した世界初の構造を持つ国際サーキット(図4、図5)である。ほかに北ショートコース、ダートトラックコース、ジムカーナなどが行えるマルチコースがあり、ホテル、キャンプ場、様々なアトラクションやこどもも楽しめるカートアトラクションなどが併設されて、モータスポーツファンだけでなく、ファミリーが楽しめる施設となっている。
ここは1997年にオープンし、当初は「ツインリンクもてぎ」と表していた。その後2022年に鈴鹿サーキットと経営を統一し、現在の名前になっている。
開発は1989年に開始され、その工事の途中で見学取材に訪れる機会があった。当時同じ出版社の土木部門の編集長と一緒で、彼が言うには今の日本で有数の土木事業ということだった。土木には全くの門外漢であったが、構内にとどめられたタイヤが4m以上あるダンプ(運転席からはすぐ下が見えないので絶対に近づくなと言われたので正確な大きさは不明)、山を削り、その土砂を谷に埋め、平地を作る工法で、まったく土や石を外部に持ち出さないでいることなどをホンダの関係者に説明してもらい、その工事の高度さが少し分かった。バスで各所を案内していただいたが、ある崖にある沢にバスが止められた。外に出ることはできなかったが、その沢は絶滅危惧種に指定されているトンボの生息地だということが環境アセスメントで発見され、保全するのだという。当然今でもその場所は公開できない。
2011年の東日本大震災で各設備も打撃を受け、オーバルコースについては大幅な改修が必要になり、現在レースは行われていない。実はここで開催された日本で初めてのインディレース開催には懐疑的だった。「オーバルコースをぐるぐる回ってるだけでしょ」。しかしいざ現地で向かい合ってみると、毎周の駆け引き、ゴールまでのペース計算が分かるようになり、なぜアメリカ人が熱中するのかが分かった。そのレースが行われなくなったのは残念だが、ロードコースでは二輪のMotoGP、四輪のSUPER GT、スーパーフォーミュラなどは今でも熱いレースが繰り広げられている。
ホンダは鈴鹿サーキットと、このもてぎという二つのサーキットを作り、国際レースをファンに開放している。ヤマハが1961年から二輪世界GPに挑戦して以来一度も休んでいない。そのことを私は本当に尊敬している。そんなことを両社の関係者に話したことがあるが「その話はぜひ皆さんに広めてください」と言われた。モータースポーツへの熱意と誇りがその言葉にこもっていた。トヨタもその後富士スピードウエイを手に入れ全面改修した。歴史は続いていく。
冒頭に述べた通り、ホンダコレクションホールはそんな環境の中にある。自分はもちろん取材仲間は、レースの取材などで訪れたとき、ここの見学はセットであった。仕事外で子供を連れて行ったときは、一通りクルマとバイクを見た後はASIMOに釘付けになっていた。
その後もてぎ内の移動用通路がメインスタンドを避けるようにコース沿いをう回する改修があった。モビリティとスタンドを道路を横断することなく移動できるようになり、コースサイドの見学もしやすくなったようだ。コレクションホールの展示リニューアルも含め、もてぎの進化は続いているので、あまりご無沙汰してはいけない。(山崎 敏司)
本特集号発行にあたり、取材当日の準備、案内、説明、ディスカッションやその後の記事作成にあたる写真や動画提供など協力を頂きました、本田技研工業株式会社UX企画課、原点ライブラリーGr、技術広報課の皆様、およびホンダモビリティランド株式会社モビリティリゾートもてぎスタッフの方々に御礼を申し上げます。(野口 勝三)
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